古都、奈良の一年を締めくくる春日大社摂社若宮神社の例祭で、国の重要無形民俗文化財に指定されています、平安末期の保延2年(1136)9月17日、関白藤原忠通が五穀豊穣を祈って始めて以来、一度として途切れることなく、連綿と守り継がれている伝統行事です。若宮様が参道脇のお旅所にお還りになる「遷幸の儀」から始まる17日は、平安から江戸時代に至る古式ゆかしい時代行列が奈良の町を練り進みます。「大和一国を挙げて盛大に執り行われ、八百六十有余年にわたり途切れることなく開催されている。
春日大社の摂社、若宮神社の大祭である「春日若宮おん祭」は、平安時代後期(1136年)、時の関白・藤原忠通が全国的な飢饉や疫病の退散と五穀豊穣を願って始めたとされ、今日まで毎年休むことなく行われてきた。2015年には880回目を迎える奈良の祭礼である。
4日間にわたって行われる数多くの行事のうち、12月17日のお旅所祭で奉納される多種多彩な神事芸能は、とりわけ名高い。 祭神を遷した仮御殿前に芝舞台を設け、8人の巫女による古式ゆかしい神楽や4人の少年たちによる珍しい東遊(あずまあそび)の舞、田楽、おん祭だけに伝わる神秘的な舞・細男(せいのお)、猿楽、大陸の薫りあふれる舞楽、春日大社に伝わる和舞(やまとまい)など、古代日本に見られた芸能のさまざまが次々に繰り広げられる。中でも祭りの発祥当初から上演され、かの世阿弥にも影響を与えたという田楽、能のルーツに当たる『神楽式(かぐらしき)』と呼ばれる猿楽は、日本の芸能史における意義も大きく、芸能の古い姿を今に伝えるものとしても興味深い。なお芝舞台は「芝居」の語源であるとされる。
深夜まで、およそ8時間続く芝舞台での神事芸能は、夜のとばりとともに火が入れられ、厳寒の闇夜の中ゆらめく篝火に照らし出される舞人たちの姿は、時空を超えて幻想の世界へと私たちを誘ってくれる。奈良ではこれが一年の祭りおさめ。祭りのにぎわいの中に年の暮れを感じさせる、古都の風物詩ともなっている。